ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】
「ラムちゃん、私たちが食べるわけじゃないから」
田所さんは、机に突っ伏して懸命に笑いを堪えてる。
「え? あれ、そうなんですか? 食べれないんですか?」
「食べるのは審査員、私たちはただのお手伝い」
「えぇっつまんなーい」
こ、この子はクライアントの前でなんてことを……
ひぃって髪が逆立つ勢いで、口をパクパクさせ焦る私を、
樋口さんが肩を震わせながら「まぁまぁ」となだめる。
「審査員は、僕と大河原、ベルナード氏の3人ですから。きっと食べきれませんよ。篠木さんも、助けてね」
うわ、おっとり草食系だと思ってたのに。
こんな甘い顔もできるんだ、意外だなって驚いていると……
「……ハル君……」
隣から、妙に艶っぽい声……。
見なくてもわかる。
今ラムちゃんの目はハートマークだ。
まずい。
2人の世界にワープしちゃった。
田所さんと(困りましたね)と、アイコンタクト。
散々釘を刺しておいたのに……やっぱり人選誤ったかなぁ。
「ゴホゴホッええと、確認していいですか」
田所さんがわざとらしく手を挙げて、二人の空気をカットしてくれて。
「え、あぁ、何ですか?」
樋口さんがこちらを向いてくれたので、やれやれと胸をなでおろす。
田所さん、グッジョブ!