ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】
「ででも……取締役の方々が、味方をしてくれるんじゃ?」
張さんはその瞳に憐れむような色を浮かべ、軽く肩をすくめた。
「リーズグループにとって総帥というのは……絶対王政時代の国王のようなものです。結局のところ、その命令に逆らえるものなど、誰もおりません」
「そんな……」
絶対王政? 国王?
時代錯誤なワードを笑おうとして、ぎこちなく唇の端が持ち上げてみる。
彼の人生は、彼のものでしょ?
本人が嫌だって言ってるのに、それを強制するなんて。
21世紀に、このグローバル化の時代に、そんなことが許されるの?
反論しようとした私を、「現在では」と、流れるような言葉が遮った。
ライアンの資質を知っているのは、もう総帥だけじゃない。
彼が得難い人材であることを、取締役会の面々も承知してる。
同時に、彼らだって、ライアン本人に本社入りの意思がないってわかってる。
だから。
総帥の意向を忖度した一部の人たちが、ライアンをシンガポールへ迎えるため、動き出してしまったという。
ターゲットになったのは――お義父さん。
父親から説得されればライアンも従うのでは、という話を、お義父さんは現在のところ、断固拒否してるらしい。
息子には、思うように人生を送らせてやりたい、と。
すると、彼らは次に、お義父さんの事業にあの手この手で横やりを入れだした。