ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】
「リーズグループは、古くは家族経営から始まった、親族間の結束を非常に重んじる組織です。人材や原材料、情報など、様々なものを融通しあい、発展してきました。つまり、日本語で言う“村八分”というものにされてしまいますと、ビジネスが非常に困難になるわけです。しかもその情報は、世界中に瞬く間に広がり、グループ外の企業からも取引を渋られることになる」
情報が滞る、取引が滞る――……
せき止められた水のように、流れは止まり、後は濁っていくばかり。
生き物が住めない汚泥と朽ち果てる……
頭の中でイメージできてしまったその映像に、吐き気がした。
こんなの、単なる陰険なイジメじゃないの。
「事態の打開に奔走されていたジエン様も、度重なる心労でついに年末倒れてしまわれ、現在も療養中です。ご存知でいらっしゃいますね?」
ドキリとした。
大したことないって……笑ってたけど。
実はそんなことになってたなんて……
「ライアンは……知ってるんですか? そのこと」
「ジエン様の事業が思わしくないことは、ご存知です。その裏にリーズグループの思惑があることも……おそらく、カンのいい方ですから気づいているかもしれません」
言われて、思い出した。
最近彼が、世界各国の経済誌を取り寄せて、やけに読み漁ってたこと……
「解決するためには、ライアン様にシンガポールへ出向いていただき、総帥に頭を下げていただくほかございません」
「それって……」
「その後は、総帥のご指示に従って、本社にポストが用意されるはずです。もちろんご結婚相手も、総帥がふさわしいご令嬢をお選びになるでしょう」