ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】

――黄の養子ということでしたが、実際は、彼らには自分の戸籍すらなかったとか。どの子もみな見目麗しく、高い水準の教育を受けていたと言いますから、おそらく黄がいずれ自分の仕事で使うために買い集め、仕込んでいたのでしょう。


吐き気がした。
気持ち悪い……

買うとか、仕込むとか。
人を、まるで物か動物みたいに……

それを平気で口にできるあの人も、なんなの?
私が甘いだけ?


――日本のように平和な国にお育ちのあなたには、想像もできないことかもしれませんが。


張さんのセリフは、いつかのシンシアの言葉と奇妙なほど似ていた。


『あなたみたいな平和ボケした国で育ったのほほんOLじゃ、手に負えないわよ』

もしかして彼女は、上海で暮らしていた頃のライアンを、知ってるんだろうか。
だからあんなことを言った?


――子どもたちが一時収容された養護施設を視察に訪れていたジエン様は、ライアン様と出会い、自分の息子としてカナダへお連れになることを決意されます。

――ジエン様と出会っていなければ、いえ、それより以前にリーズグループが市政府に協力しなければ。ライアン様の一生は今とは全く違ったものとなっていたでしょう。マフィアの片棒を担ぎ、暗闇に身を溶かすようにして生きていたに違いありません。


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