after「恋がしたい。ただ恋がしたい。」
ニヤニヤニヤ。
紫の笑いが止まらない。どうやら、すっかりからかいモードに入ってしまったようだ。
「私よりも、香織のほうがよっぽどきょうだいみたいに気が合うねって言われてきたもんね」
「だって、本当は『私』の弟だもの。さすがに香織だって裕介がただのお人好しじゃないって分かってきた頃じゃないの?別れるなら今のうちだから。他にもっと香織の事を大切にしてくれるいい男がいるかもしれないし。……ね?」
『親友としても姉としても、これ以上の喜びはない』と、私達の付き合いを一番喜んでくれた紫だけど、どうやら裕介くんに対してはその気持ちを素直に伝えられないらしい。
本当、あまのじゃくな親友だ。
「いや、絶対に別れないよ。……別れるなんて言われたら、どこかに閉じ込めて誰の目にも触れさせないようにしちゃうかもね」
そんな危ない発言を挟みつつ、裕介くんは艶やかな唇の片側を上げながら笑みを浮かべる。
その笑顔はいつも接客で見せているキラキラとしたキラースマイルではなく、音を付けたらニヤリという音がぴったりとくる、黒い笑い方だった。