after「恋がしたい。ただ恋がしたい。」
そして視線を下げて、ため息を一つ吐いた。
「……ま、こういう報告は両親の前に紫ちゃんに言わないと、後でうるさいからね」
なんだか投げやりな裕介くんの発言に、紫は「何だとー!」と言いながら、すかさず裕介くんの肩にワンパンチ入れていた。
ベチッ、とかなり派手な音がしたのに、何でも無いように裕介くんは言葉を続けた。
「元々お店が軌道に乗ったら結婚したいって香織ちゃんには言ってたでしょ?それ、両親にも話してたしね。……それにさ、うちのお父さんとお母さんには、香織ちゃん昔っから散々会ってるでしょ?」
『Felitita』のチーフシェフだった青木さんが独立して立ち上げたお店がオープンしてから、もうすぐ1年が経つ。
最初はマネージャーとして働いていた裕介くんも、今では青木さんと同じく経営者になっている。
『Felitita』ほどの規模ではないけれど、『Felitita』で一番人気だったウェイターの裕介くんがいる店、という事で評判も上々だ。
「香織ちゃんの家だって、僕と付き合ってるって聞いたら泣いて喜んでくれたんでしょ?じゃあ結婚するって言ってもオッケーなんじゃないの?今更反対なんてされないって」
確かに、そうかもしれない。
でも、うまーく丸め込まれてる気がするのはどうしてだろう……。