after「恋がしたい。ただ恋がしたい。」

「裕介、ストップ。香織、これ以上何か言われたら、顔から火が出るわよ」



……しつこく言うけど、この話をしているのは真っ昼間のカフェのど真ん中の席だ。



(たぶん)恥ずかしさで真っ赤に染まっている頬を押さえる私を、二人はにやにやと同じような顔で笑いながら見ていた。



裕介くんは、付き合うまで私にとってはどこまでも『優しい人』だったけれど、恋人になった今はこうして私が恥ずかしくなるような事までさらりと言ってからかってきたり、延々と意地悪をされたりする事もある。



彼曰く『頭はいいのに、天然で鈍感で隙だらけ』な私が、無自覚に裕介くんの嫉妬心をこれでもかと煽ってしまい、お仕置きと言う名の甘い甘い意地悪をされたのも一度や二度では……




ーーって、ダメダメ。それこそ真っ昼間のカフェで思い出していい事じゃないっ!




まぁ……お仕置きは置いといて、彼の姉である紫も同じく人をからかって楽しむという悪い癖を持っていて、高校時代からしっかり者で通っていた私をからかったり叱ったりできるのは、唯一この人だけだった。




「……やっぱり裕介くんと紫って血が繋がってるね」


余計な事まで思い出して、どうしようもなく火照った頬を押さえたまま、私はため息混じりに言葉を吐き出した。
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