あの日から、これからも。
キーンコーンカーンコーン

5.6 限目が終わりあとは帰るだけ。
やっと帰れる。

終礼を終えてカバンに教科書やペンケースをしまう。

「おい、帰るぞ」

「え、あ うん」

帰りも一緒なのか。
まぁそうなるよね。

「はい、教科書。」

「え?これ私のじゃなくない?」

「あぁ、机の中よく探したら俺のあったから交換」

「なんで?! あんなシワシワな教科書じゃ授業できないでしょ」

「いいじゃん別に。さっさと片付けろよ。」

「……うん」

彼から教科書を受け取りカバンにしまう。
本当は置き勉をして帰りたい所だけど私がいない間に何されるか分からないから無闇に置いて帰れない。
高二になってすぐの時に教科書は私が目を離した隙にトイレのバケツに浸されていてびしょ濡れになってしまった。
急いで乾かしたけど結局シワシワになり所々見えないページがある。

それを見たこいつは自分の綺麗なものと変えてくれたんだろう。

若生澄晴は私の手を握り歩いていく。

「ごめん、さっき助けに行くの少し遅かった」

「え?」

「足、痛かっただろ。女って怖いな」

「あぁ。あんなの慣れてるし」

「次からは無くすようにする」

「何でそんなにしてくれるの?」

「何回言えばいいんだよ。お前が苦しそうだからって言ってるだろ」

「それだけ?私なんて助けたって助けなくたってあんたには何も関係ないことじゃん」

「いいだろ、俺が守ってやるって言ってんだから。理由なんて」

「まぁいいけど。 いつまで手繋ぐの?」

「あ、なんも考えてなかったわ。 てかお前の家こっちの方であってる?」

「いや、 真逆だけど」

「は?なんで言わねんだよ。お前バカかよ」

「いやいや、帰る準備してたら急に迎え来て何も言わずに手を引っ張って行ったのはそっちでしょ」

「はぁ、普通、どこ行ってるの?とか聞くだろ。戻らなきゃなんねーじゃん」

「意味わかんないんだけど、なんで逆ギレしてんの」

「うるせえやつ。 」

「あんた、ムカつくんだけど。なんでモテんの?」

「それはこっちのセリフだし。周りの男達の気持ちがしれねぇよ。 こんな素直じゃねぇやつ」

「は?こっちだってあんたみたいなすぐ人の事文句言うやつなんてごめんよ」

「可愛くねぇなほんと。顔だけだな」

「だからそれはあんたもでしょって!」

何なのこいつ。
優しく見えて口は悪いし笑わないし。
何もかもが謎すぎる。
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