Baby's Breath
テレビの中で千景くんは楽しそうに歌っている。


それを見て固まる愛空に、私はなんと言えばいいのか。


「光希……」


「えっと……」


「もしかして、これが光希の理想とか言わないよね?」


そんなことを言ったら本気で痛い人!!


私は首を左右に振った。


「ち、違うの!!今人気だから私も見てみたらハマって……っ。なんだか愛空に似てたからつい…っ」


って、私は何を言ってるの!!


恥ずかしくなって壁に頭を打ち付ける。


愛空はそんな私を壁から離して抱きしめた。


「あ、愛空!?」


「確かに二次元には勝てない。俺、こんなにイケメンじゃないし」


「愛空はイケメンだと思うけど……」


「光希がアニメ好きなの知ってるし、俺もアニメ好きだから理解できるし、そういう所も含めて好きになったんだけど」


「えっと……?」


「なんか、実際彼女がアニメとはいえ、イケメン見て目を輝かせてるって考えると嫌っていうか……」


「アニメだよ?現実じゃないよ?」


「それでも嫌なの!俺以外の男を好きになるなんて嫌だって思っちゃうんだよ!!俺めっちゃ心狭い!!」


私を抱きしめたままそう言う愛空。


私はどうしたらいいのか分からずジッとしていた。


「俺に似てる!?うそだよ!!こっちの方がイケメンだもん!!歌って踊れるアイドルだよ!?俺はただの会社員で、キラキラ振りまくなんて出来ない!!」


「当たり前だよ!!あれはアニメだから出来ることだよ!?実際出来たら手品だよ!!」


「光希には俺の事だけ考えててほしい!!俺はこんなにも光希の事考えてるのに!!」


そう言って愛空は私を軽く離した。


「光希がこのアニメにハマってるなら仕方ないけど、優先順位は俺を最初にして!」


「え!?どういう事!?」


「このイケメンの事を考えるよりも先に、俺の事考えて!!」


いつも愛空はこうだ。


私と二人になるとこうして独占欲を出してくる。


甘えてくるっていうか……。


溺愛してくれるのはありがたいけど、二次元にまで嫉妬するなんて。

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