ラブレター【完】
パチパチパチパチ。
「初めて」を弾き終えたと同時に、誰かの拍手が鳴った。
びっくりして椅子から立ち上がると、入り口に星川先輩が立っていた。
「星川先輩」
「クラシックじゃない曲弾いてるの、珍しいね」
先輩はそう言いながらこちらに歩いて来た。
「廊下歩いてたらピアノが聴こえて来たから、また鈴木さんが練習サボって弾いてるのかなって」
「また見つかっちゃった、すいません」
実は、こうしてピアノを弾いているのを、何度か星川先輩に見つかっている。
その度に「クラの練習もちゃんとやるんだぞ」と言われているのに、また見つかってしまった。
「でも鈴木さんのピアノの選曲、いつもすごくいいよね」
「え、先輩、ピアノ曲わかるんですか?」
「ピアノ習ってるからね。あ、今弾いてた曲は知らないけど。でもすごくいい曲」
星川先輩は目を細めて言った。
「初めてっていう曲ですよ」
わたしが言うと、先輩は「ああ、すごくぴったりな曲名だね」と返してから、
「明日からパート練習始まるから、ほどほどにね」
と言って、第二音楽室を颯爽と出て行った。
やっぱりかっこいいなあ、星川先輩。
…………あれ?
星川先輩って、わたしがここでピアノ弾くのを知っていて、ピアノ曲もわかる。
おまけに背も高い。
『雨だれ』さんの今の所の条件を満たしている気が……。
いや、でも……まさか、ね。