ラブレター【完】
みんなの憧れ、星川先輩が『雨だれ』さんだったらいいなあ、とは思うけれど。
こんなイケメンでモテモテな先輩が、わたしみたいなチンチクリン、好きになるかしら。
なにしろ『雨だれ』さんについての情報はないに等しいのだ、ちょっとした偶然の一致で決めつけていたら、ただの勘違い女子になってしまう。
とりあえず、星川先輩は『雨だれ』さん候補の1人、くらいに考えておこう。
練習の件で先輩に釘を刺されたので、わたしはピアノを弾くのをやめて、クラリネットの練習を始めた。
けれど、わたしに個人練習というものが相当向いていないらしく、30分もしたらすぐに飽きてしまった。
ピアノなら延々弾いていられるのに。
どうしよう、なんとなくは吹けるようになったし、今日はもう帰ろうかな。
帰ろうかなと思い立ったら、もう練習なんてできる気がしない。
クラリネットをさっさと分解して、ケースに閉まった。
そして第二音楽室を出ようとした所で、
「あ!」
あることを思い付いて、思わず声を上げた。
『雨だれ』さんにまたメッセージを書こう。
きっと返事くらいはくれるはずだ。
わたしは黒板の前に立つと、白いチョークを握って、
「雨だれさん、ヒントください」
大きな文字でそう書いた。