ラブレター【完】
次の日の放課後。
パート練習の合間に、わたしは一応第二音楽室を覗きに行った。
『雨だれ』さんからの返事が来ているかもしれないからだ。
でも前回は1日置いて返事が来たから、もしちゃんと返事をくれるとしても明日の可能性が高そうだ。
それでもわざわざ見に行ってしまうのは、早く『雨だれ』さんに近づくヒントが欲しいから。
ヒントをくれるとは限らないけれど。
開きっぱなしになっている入り口から、そっと中を覗く。
そこそこ夕方で、でも今日は朝から天気がいいせいか、まだ電気をつけなくても黒板の文字くらいは確認できた。
あっ!返事来てる!
「ヒント?毎日顔合わせてるよ」
黒板いっぱいにでかでかと書かれた、真っ白な文字。
その文字を目にした瞬間に、嬉しくて頬が緩んだ。
ちゃんとヒントをくれたことはもちろんだけれど、それよりも、すぐに返事をくれたことが何より嬉しかった。
……毎日顔合わせてるよ、か。
敬語じゃないから、少なくとも1年生じゃないことがわかった。
2年生か3年生。
毎日顔を合わせるなら、同じクラスか、同じ部活か。
でもこれだけじゃ全然絞れない。
もっと情報が欲しい。
けれど、きっと学年や部活を尋ねても、答えてくれない気がする。
「雨だれさん、趣味はなに? 」
書いてみてから、まるでドラマでよくあるお見合いのシーンみたいなこと訊いてるな、と思って1人で笑った。