ラブレター【完】
「理奈のピアノは元気いっぱいだね」
「あ、パパ。おかえりなさい!」
日曜日、家で怪獣のバラードを練習していたら、弟のサッカー練習に付き合っていたパパがいつの間にか帰って来ていて、わたしに声をかけた。
「それ、合唱コンクールの?」
「うん。今年も伴奏だって。わたしたまには歌いたいのに」
「はは、ピアノ弾けるとそうなるよね。どう?うまく弾けそう?」
「全然難しくないんだけどね、オクターブで音鳴らすのが多過ぎて手が痛い」
「理奈の手はちっちゃいからなあ」
そう言ってパパは、ピアノの上に置かれていたわたしの手に自分の手を広げて並べた。
「こんなに大きさ違うもんな」
「ほんとだ、ずるい!そりゃパパの方がうまく弾けるよねー」
わたしが口を尖らすと、パパは笑ってわたしの頭をよしよしと撫でた。
「理奈のピアノ、パパは大好きだよ」
パパはいつもこうやって、わたしの頭を撫でてくれる。
優しくて大好き。
頭よくてハンサムで、運動神経もよくて、優しくてピアノ上手で。
……パパみたいな人が『雨だれ』さんだったらいいなあ。
そしたら絶対好きになるもの。
わたしの理想はパパ。
だからなかなか恋できないのかも。