ラブレター【完】
「えっ…………なに?これ……」
放課後、いつものように第2音楽室に行った私を待っていたのは、黒板にでかでかと書かれた愛の告白だった。
わたしの背後、廊下に誰もいないことを確認して、入り口のドアをぴしゃりと閉めた。
そしてもう一度、黒板に目をやる。
鈴木理奈様……同姓同名がいなければ、間違いなくわたし宛だ。
もしかして、イタズラ?
頭ではそう思いつつも、「大好きです」というストレートな言葉に、わたしはすっかり心を掴まれてしまった。
だって、「大好き」なんて言われたことないもの。
ドキドキする。
本当に愛の告白だとしたら、これがわたしが生まれて初めてもらったラブレターってことで、でもまさか、こんなド派手なラブレターをもらうとは思わなかった。
送り主は……『あまだれ』??
あまだれと聞いて思い出すのは、ショパンの「雨だれのプレリュード」という曲だけ。
でも「素敵なピアノをいつもありがとう」とあるから、きっとショパンの雨だれから取ったニックネームに違いない。
『あまだれ』……つまり『雨だれ』さんというわけか。
ん?ピアノをいつもありがとう?
わたしがここでピアノを弾いていることを知っている人ってこと?
うーん……。
『雨だれ』さん、一体誰なんだろう。