ラブレター【完】
このままじゃらちが明かない。
文通は楽しいけれど、このまま続けていても『雨だれ』さんの正体には辿り着けないままだ。
だからわたしは今日、少し違う質問をしてみようと思った。
放課後、白いチョークを握りしめて、わたしはごくりと唾を飲み込む。
そしてゆっくりと、黒板に文字を書いていく。
「わたしのこと、いつから好きでいてくれてるの?」
こんな恥ずかしいこと、きっと面と向かっては訊けない。
文通だからこそ、しかも相手がわからないからこそ、無責任に言葉を投げられるのだ。
でも書いてみたらやっぱり恥ずかしくて、1人で赤面してしまった。
『雨だれ』さんはどういう答えをくれるんだろう。
どんな答えでもきっと嬉しい気がするけれど、それよりも、答えによっては核心に迫れるかもしれない。
例えば「何年も前から」だったら、同じ小学校出身の可能性が高い。
もし「つい最近」だったら、今年初めて同じクラスになった男子の可能性が高い。
でも「1年前から」だとしたら、吹奏楽部員含めて、もう誰でも当てはまってしまう。
まあとにかく、明日の『雨だれ』さんからの返事次第だ。
早く家に帰ろう、そしてさっさと寝よう。
最近いつも翌日がとても楽しみだけれど、今日は特別待ち遠しくて仕方ない。