ラブレター【完】
下校時刻になったので、急いで昇降口まで降りたら、下駄箱の前でちょうど帰ろうとしているともちゃんを発見した。
「あれ、ともちゃんだ」
ともちゃんは水泳部で、今の時期はまだほとんど自主トレだから、帰宅部みたいなもんだ。
だから、こんな遅い時間にいるのは不思議なのだ。
「おー理奈。部活帰り?」
「うん。ともちゃんは?」
「お前、誰のお陰で来月からプールの授業始められると思ってんだ?」
「あ!プール開き?」
ともちゃんは「つまりプール掃除な」とため息を付きながら言った。
「やっと終わって、職員室に鍵返して来たとこ」
「お疲れさま!……そっかあ、もうすぐ夏だね」
靴を履きながら、わたしは言った。
「理奈、泳ぎたくてウズウズするだろ?」
「うん!」
「水泳部入ればよかったのに」
「だって、吹奏楽もやってみたかったんだもん」
靴を履き終えたわたしに、ともちゃんは「途中まで一緒に帰るか」と言った。
わたしの家は歩いて通える距離にあるけれど、ともちゃんの家はそのずっと先で、だから彼は自転車通学をしている。
「でもともちゃん、自転車でしょ?」
わたしが訊くと、
「そんなん、理奈んち辺りまで押して歩くからいいよ」
と笑って言った。