ラブレター【完】

去年も今年も同じクラスだけれど、ともちゃんと一緒に帰るなんて初めてだ。

いや、そもそも男子と2人で下校なんてしたことがない。

「うわー、すっごい綺麗」

時刻は黄昏時で、沈みかけた太陽が夜になろうとする空をとても不思議な色に染めていた。

オレンジ色でピンクで、紫で青い。

幻想的なグラデーションを見て、わたしは思わず感嘆の声を上げた。

「お、ほんとだ。すげーね」

自転車を押して歩くともちゃんも、空を見て目を細めた。

その横顔がやけに大人びて見えて、少しドキッとした。

小さい頃からスイミングで顔馴染みだった、わんぱくでやんちゃなともちゃん。

去年再会した時は、全然変わってないなあと思ったのに。

気づいたら背が伸びてるし、顔も少し男っぽくなったし、声だっていつの間にか声変わりしてるし。

最近クラスの女子の中で、天寺くんかっこいいよね、という話がよく出る。

そういえばこの間も誰かに「天寺くんって彼女いるの?」って訊かれた。

そんなの聞いたことないから、「たぶんいないんじゃない?」って答えたけれど。

そもそも、ともちゃんって恋愛とかに興味あるのかなあ?

そんな話、したことない。

「ねえ、ともちゃんってさあ」

「ん?なに」

「好きな女の子とかいる?」

キュッとブレーキの音がして、ともちゃんは急に立ち止まった。

「……はあ?!」

そして、バカみたいに大きな声でリアクションした。
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