ラブレター【完】
「突然なに?!どんなタイミング?なんで夕日から急にその話になった」
「いや、夕日関係ないけど、なんか聞いてみたくなって」
「そんなん修学旅行の夜にでも聞けよ!」
「ともちゃんとは同じ部屋にはならないよー。男女別だもん」
わたしが答えると、ともちゃんは「あ、そっか」と言ってから、また自転車を押して歩き始めた。
「えっ、答えてくれないの?」
わたしも慌てて歩き出しながら言ったら、ともちゃんはこっちを見て、少しだけ笑った。
やっぱり前より大人っぽくなった気がする。
「知りたい?」
「うん」
わたしが頷くと、ともちゃんは「ふーん」と小さく言ってから、
「いるよ、好きな子」
わたしの顔を真っ直ぐに見て、真面目な顔でそう言った。
…………あれ?
なんだろう、これ。
ともちゃんが答えたその瞬間、心臓がずうんと変に重苦しくなった。
なにこれ、どうしてだろう。
「……へえ」
胸に何かつかえた感じがして、なぜかうまく声が出せない。
「……好きな子って誰?」
「ひみつ」
ともちゃんは、いつか『雨だれ』さんが黒板に書いたのと同じ言葉を放った。
あれを読んだ時は、ドキドキしかしなかったのに。
今はモヤモヤしてすごく息苦しい。
同じ言葉なのに。
ひみつとか……好きな子いるとか。
自分で訊いたくせに勝手だけど。
……なんか、すごく、嫌。
「理奈はいんの?好きなヤツ」
ともちゃんがわたしにそう訊いた時、ちょうどわたしんちに入る曲がり角だったから、
「……ともちゃんには教えないもん!じゃあね!」
わたしはパタパタと逃げるように走って角を曲がった。
……わたし、どうしてこんなにムカムカしてるんだろう。