ラブレター【完】
放課後は今日も全体練習。
個人練習やパート練習よりはよっぽど楽しいけれど、何度も何度も同じ所を繰り返し練習させられてうんざりした。
やっぱり練習は嫌いだ。
わたしはきっと、ステージの上で演奏する本番が好きなのだ。
本番は本当に気持ちがいい。
自分の音がみんなの音と合わさった瞬間に、泣きたくなるほどの高揚感で胸が熱くなる。
その瞬間を最高のものにするために練習するのはわかるけれど、どうにもこうにも飽きっぽい。
パートリーダーに「真面目に練習したら、きっと一番上手くなるのに」と言われたけれど、別に一番になりたいわけじゃないからモチベーションは上がらない。
その上、『雨だれ』さんからの返事はとても気になるし、ともちゃんのことでまだモヤモヤしたままだしで、いつも以上に練習に身が入らなかった。
やっと練習が終わって、わたしは一目散に第二音楽室へと向かった。
昨日『雨だれ』さんにした質問の返事を、一刻も早く確認したい。
ドアの開いた入り口からひょこっと中を覗く。
昨日と同じ、夕焼けで染まった教室。
黒板には、今日は白いチョークでいつも通り大きく返事が書いてあった。
「気づいたら、いつのまにか好きだったよ」