ラブレター【完】
「いつのまにか」なんて、そんなの全然ヒントにならないじゃない。
そう1人で唇を尖らせたわたしのほっぺたは、心の声とは裏腹に、バカみたいに熱かった。
最初の「大好きです」と書かれたメッセージを読んだ時よりも、すごくドキドキした。
初めは正直、あまり現実味がなかった。
けれど、それから『雨だれ』さんと毎日のように文通をした。
未だに顔がわからなくても、カレーが好きで読書が好きで、わたしのことを好きな『雨だれ』さんは、確実にいる人なのだ。
だから、今「好き」って言われる方がドキドキする。
それに、「いつのまにか」というのがリアル過ぎて、思わずきゅんとしてしまったのだ。
『雨だれ』さん、あなたは誰?
どんな顔をしていて、どんな声で話すの?
どうして名乗ってくれないの?
『雨だれ』さん、わたしは……。
「あなたのことが、もっと知りたい」
黒板に、大きく大きく書き殴った。
書きながら、まるで「好き」って告白しているみたいだな、と思った。
……そっか、わたし。
顔も名前も知らない『雨だれ』さんに、恋しているのかもしれない。
変なの。
相手が誰なのかもわからない初恋なんて、どうかしている。