ラブレター【完】
まず思い浮かぶのは部長、星川先輩。
知っているどころか、わたしがピアノを弾いているのを何度も目撃している。
でももしかしたら、数少ない他の男子部員達も、わたしが練習中にピアノ弾いていることくらい知っているかもしれない。
そうだ、メッセージの口調から、後輩はなさそうだって結論が出たから、当てはまる人数は限りなく少ない。
その中で、運動もできて足も速そうな人……去年リレーのアンカーやってた星川先輩くらいだ。
星川先輩は本も読みそうだ。
部活なら、やっぱり星川先輩しか候補がいない。
……同じクラスの男子は?
足が速い人と言えば、ともちゃん。
ともちゃんはスポーツ万能だ。
でも、ともちゃんはわたしのピアノのこと知らないし、ショパンを食パンと聞き間違うくらいだし、それに。
好きな人いる、って言ってたし。
……思い出したらまたムカムカしてきた。
なんでムカムカするんだろうって不思議だったけれど。
もしかしたらわたし、淋しいのかなあ。
ともちゃんは幼なじみのようなものだから、その彼が恋をしているなんて、知らない人みたいになる気がして淋しいのかもしれない。
それに、誰かにともちゃんを取られちゃう気がして嫌なのかも。
だって、わたしがともちゃんのいちばん仲がいい女子だもん。