ラブレター【完】
ともちゃんのことは一旦置いといて、クラスの他の男子。
わたしのピアノの件を知っているのは、たぶん透くんだけだ。
他の男子は、たまたま第二音楽室の前を通って見かけたりしない限り知ることもない。
でも、あんな所、放課後たまたま通ったりする?
音楽室や第二音楽室は、わたし達の教室や職員室、昇降口などがある北校舎から渡り廊下を渡った、南校舎にあるのだ。
それに、入り口から中を覗いただけじゃ、誰がピアノを弾いているかなんてきっと見えない。
まあ、こっそり忍び込んで聴いていたら、演奏に夢中なわたしは気づかないだろうけれど。
限りなく低い可能性だ。
透くんは、足速かったっけ?
体育は男女別だし、今年の春同じクラスになったばかりだから、足の速さなんて知らない。
でも透くんは音楽にも精通しているみたいだし、ショパンの雨だれくらい、当たり前に知っているに違いない。
それに博識で秀才だから、本もたくさん読んでいるんだろうなあ。
透くんとわたしは、クラスの委員長副委員長という関係だから話す機会は山ほどあるし、わりと気も合うから仲がいい。