ラブレター【完】
「ママあのね、相談があるんだけど」
家に帰ったわたしは、着替えるのもあとにして、キッチンで夕飯の支度をしているママの元へ行った。
「相談?なあに?」
ママは野菜を切っていた手を止めると、こっちを向いてにっこりと笑った。
うちのママはすごく美人。
パパが一目惚れしたのも納得だ。
もう今年で40歳なのに、シワひとつないし、肌は真っ白だし、年の離れたお姉ちゃんって言っても通ってしまいそう。
わたしはパパにもママにもちゃんと似ているのに、特別可愛いわけでも、特別美人なわけでもない。
まさに遺伝の不思議だ。
「あのね……すごく変なこと言うけどいい?」
「うん。どうしたの?」
「えっと…………顔も名前もわからない人のこと好きって、わたし頭が変なのかな?」
わたしが言うと、ママは少し驚いたように目を開いて、それからお鍋がグツグツしていたIHのスイッチをピッと消した。
「理奈、ちょっと座って話そっか」
ママがキッチンを出てダイニングテーブルの椅子に腰かけたので、わたしも隣の椅子に座った。