ラブレター【完】
4:『雨だれ』さんが好きなのに
体育館に所狭しと並べられたパイプ椅子。
普段一体どこにしまってあるんだろう、そして誰がこの全校生徒分の椅子を並べたんだろうか。
そんなことを漠然と思いながら、自分達のクラスのエリアに着席した。
今日は合唱コンクール。
正確には音楽コンクールらしいけれど。
全校生徒が順々にみな椅子に座って、体育館の中はガヤガヤと騒がしくなった。
「静かにしてください」
恐らく生徒副会長である女子生徒の声が、マイク越しに響いた。
一瞬しーんと静まる会場。
でも少しすると、控えめにだけれどあちこちで、黄色い歓声が上がった。
生徒会長の星川先輩が壇上に立ったのだ。
「今から音楽コンクールを始めまーす。どのクラスも悔いがないように、優勝目指して精一杯パフォーマンスしてくださいね」
少し遠目でもわかる、思わず見とれるほど整った甘いマスクと、それに負けないくらいの甘い綺麗な声。
挨拶を終えた先輩は、すらりと長い脚で颯爽と舞台を降りた。
「やっぱかっこいいねえ、星川先輩」
わたしの隣に座っているミカちゃんが、ため息混じりに言った。
ミカちゃんは星川先輩の大ファンなのだ。
「そうだね、ほんと素敵だよね」
本当にあんなカッコいい人が『雨だれ』さんなのだろうか?
あの人が、わたしを好き?
全然ぴんと来ない。