ラブレター【完】
3年生まで全クラスの発表が終わり、集計が始まった。
わたし達生徒は、自分の学年以外の発表に対して、学年それぞれいちばんよかったクラスに投票をするのだ。
それを集計して、各学年の優勝が決まる。
その集計を待つ間に、わたし達吹奏楽部は壇上に上がって演奏をするのだ。
クラリネットは何か決まりなのか、なぜかいつもいちばん前の列だ。
一応ファーストのわたしは、3年生に混じって最前列の端から3番目に座る。
顧問の香織先生が、指揮棒を掲げた。
アフリカンシンフォニー。
いかにもアフリカなパーカッションから始まるこの曲は、目を閉じると広大なサバンナが目に浮かぶ。
逞しい、そして美しい弱肉強食の大自然。
クラリネットの奏でる美しいメロディは、サバンナを駆け抜ける風のよう。
星川先輩達トロンボーンが鳴らす音は、まるで動物の鳴き声のようだ。
わたしは吹きながら、サバンナを駆けるライオンの背に乗ったような錯覚に陥る。
気持ちいい解放感。
まるで、プールの中みたい、と思う。
水の中は、わたしを全てから解き放ってくれる。
スイミングで練習の合間に、無になってぽっかりと浮かんでいるのが好きだった。
そんな時、同じコースだったともちゃんはよく、ふざけてわたしの足を水中から引っ張ったりした。
怒っておっかけっこになって、コーチによくお説教されたっけ。
懐かしいなあ。
……あれ、わたしサバンナにいたはずなのに。
どうしてともちゃんのことなんか考えてるんだろう。