ラブレター【完】

音楽室と準備室、第二音楽室と並んだ廊下への曲がり角を曲がった瞬間に、

ドンッ!

音楽室の方からこちらに曲がってきた誰かと、出会い頭に軽く衝突してしまった。

「きゃっ……」

「!ごめん!!大丈夫?!」

「あっ大丈夫で…………星川先輩!」

心配そうにわたしの顔を覗き込んだ目の前の人物は、星川先輩だったのだ。

「鈴木さん!……ごめんね。平気?」

「大丈夫です!先輩こそ」

わたしが言うと、星川先輩は綺麗な目を細めて「大丈夫だよ」と優しく言った。

「あ、先輩、今日はいろいろとお疲れ様でした!」

「鈴木さんこそ、伴奏もクラもお疲れ様」

そう笑ってから「ところでどこ行くの?今日部活ないけど?」と言った。

「ああ……えっと、ちょっと野暮用です」

「はは、野暮用?……あ、またピアノ弾くんでしょ?」

「えっ、ああ、そうです」

本当は違うけれど、行き先は第二音楽室に変わりない、わたしは頷いた。

「鈴木さんは本当にピアノ好きだね。クラもそのくらい熱心に練習してくれるといいんだけど」

冗談めかした口調で先輩は言うと、

「帰り道危ないから、あんまり遅くまで残んないようにな」

思わずクラクラしそうなカッコいい笑顔をこちらに向けてから、「じゃあね」と歩き出した。
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