ラブレター【完】
星川先輩、やっばりカッコいいなあ……。
一瞬ぽーっとその後ろ姿を見送っていたけれど、はっと気づいて、わたしは第二音楽室へと急いだ。
早く『雨だれ』さんからの返事を確認して、また返事を返して、そして早く教室に戻らないといけない。
ともちゃんを待たせている。
ところでともちゃんは今日、どうして一緒に帰ろうだなんて言ったんだろう。
何かわたしに話でもあるのだろうか。
そもそも、好きな子がいるならその子を誘えばいいのに。
……まあ、本当にそうしたら、ちょっと嫌だけど。
第二音楽室の入り口から、ひょいっと中を覗く。
すっかり見慣れた大きな文字が視界に飛び込んで来て、胸がトクンと鳴った。
真っ白なチョークで書かれた『雨だれ』さんからのお返事。
「優勝おめでとー!
じゃあ、優勝のごほうびに特別ね。
ヒントは名前!」
ヒントは……名前?
名前って、どういうことなんだろう。
『雨だれ』さんの名前なんて知るわけないのに。
とりあえず、ゆっくり考えよう。
「ありがとう!
絶対に雨だれさんを見つけるから」
そう黒板に書いてから急に。
本当に突然に。
わたしはあることを思い出した。
名前がヒント、だよね?
星川先輩の下の名前……「雨月(うづき)」だ。
「雨」の字が入っている。
そういえば星川先輩はさっき、なぜか音楽室の方から歩いて来た。
部活もないのに、何をしていたんだろう。
………。
…………もしかして、星川先輩が返事を書いた?
星川先輩が『雨だれ』さん、なの?!