ラブレター【完】
「ごめん、ともちゃんお待たせ」
教室に戻ると、ともちゃんは自分の席で漫画を読んでいた。
「用事終わったん?」
「うん。……ね、何のマンガ読んでるの?」
わたしが訊くと、ともちゃんは持っていたコミックの表紙をこちらに見せてくれた。
「e…rr、o、r……エラー?」
「うん」
「どんなマンガなの?」
「ミステリー」
答えながら、ともちゃんは漫画をバッグに閉まって立ち上がった。
「ミステリー?ともちゃんミステリーとか読むんだ?」
「読むよ。ミステリーならマンガでも小説でも」
「えっ、小説?ともちゃん本読むの?!」
教室の出入口に向かって歩き出したともちゃんは、くるっとこちらを振り向いた。
「俺が本読むとか似合わないって?」
「いや、そうじゃないけど……」
そうじゃなくて。
『雨だれ』さんが本好きだから、思わず反応しただけだ。
……でも、別にもう関係ない。
『雨だれ』さんは星川先輩なんだよね、たぶん。
それにともちゃんの名前、『雨だれ』と関係ないもん。
天寺智輝……全然『雨だれ』と関係ないもん。
「あま」しか合ってないもん。
ともちゃんは『雨だれ』さんじゃないもん。
別に、関係ない。