ラブレター【完】
ともちゃんはしれっとした顔で自分のアイスを食べ始めた。
横顔をちらっと盗み見る。
塩素のせいか少し赤茶けた髪が、日差しでキラキラと光って綺麗だった。
気の強そうな上がり眉、長い睫毛、すらっと通った鼻筋。
……ともちゃんって、こんなにかっこよかったっけ?
ともちゃんと初めて会ったのは、幼稚園の頃。
それから週に3回、必ずスイミングで顔を合わせてきた。
2人共背泳ぎがいちばん得意で、選手コースに上がるのも同時。
練習がいつも一緒だったせいか、わたし達はすごく仲良しだった。
ともちゃんは、イタズラ好きで冗談ばかり言う、とっても面白い男の子。
つい一緒になってふざけて、いつも2人でコーチに怒られてた。
スイミングはいつだって、すごく楽しかった。
ともちゃんがいたから。
わたしにとってともちゃんは、とても仲のいい幼なじみのような存在。
あの頃も今も、この先も。
ずっとそうなんだと思ってた。
それなのに──。
「どしたん?理奈。ぼーっとして」
隣でさっさとアイスを食べ終えたともちゃんが、わたしの顔を覗き込む。
こんな距離、当たり前に慣れっこなのに。
「アイス、食わねーなら俺がもらうよ?」
「……た、食べるもん!」
慌ててアイスにかぶりつく。
「あはは。お前、口の端チョコべったり」
ともちゃんはケタケタ笑うと、わたしの口元に手を伸ばして、親指でそっと拭った。
こんなの、全然慣れっこなのに。
鼓動がばかみたいに速くて、今にも爆発しそうだ。