ラブレター【完】
5:期限は木曜日
今日は朝から雨。
ママが「今日から梅雨入りだって」と言っていた。
そういえば、梅雨ってどうして梅の雨って書くんだろう。
博識な透くんなら知ってるかしら。
あとで聞いてみよう、忘れなかったら。
基本的に、わたしはとても忘れっぽいのだ。
パパはすごく頭がいいのに、どうして似なかったんだろう。
顔もママみたいに美人じゃないし、わたし本当に鈴木家の娘なのかしら。
でも実は、目元やくせっ毛はパパにそっくりだし、声はママにそっくりだ。
つまり、これぞ遺伝の不思議、というか遺伝の罠。
……なんてくだらないことを考えながら、雨の中をぼけーっと歩いていたら、大きな水溜まりに足を突っ込んだ。
朝から最悪だ。
歩きながら薄々気づいていたけれど、昇降口に着いて靴を脱いでみたら、やっぱり靴下までぐっしょり濡れていた。
しかも片方だけ、尚更気持ち悪い。
あーあ、朝から本当に最悪だ。
それでなくたって、わたしは今大きな悩みを抱えていて大変だというのに。
好きな人が2人もいるなんて、やっぱりわたしは頭がおかしいのかもしれない。
ため息をつきながら、上履きに履き替える。
上履きの中は左足だけべっちょり冷たくて、またため息が出た。