ラブレター【完】
外の雨は、朝よりも激しくなっている。
頭の中で流れる雨だれの曲調も激しくなって、ラ♭の音が大きく大きく響く。
踏み切りの警鐘みたいに。
「鈴木さーん?」
……でも星川先輩、わたしは。
「……おい、理奈……!」
「え?」
突然振り向いたともちゃんの、小声だけれど強い口調に、わたしは急に現実に引き戻される。
「呼ばれてんぞ……」
「えっ……はい!……え、えーっと」
わたしがまごまごしていると、ともちゃんが教科書の1行を指差した。
「ここ訳せって……」
「え、あ、はい。えっと……」
ともちゃんの指が指した文に目を落とす。
……なにこれ。
「わたしは放課後、ピアノを弾くつもりです」
ただの偶然だけれど、わたしなんで今日の予定、みんなに発表させられてるんだろう。
「はい、ありがとう。鈴木さん、授業中にぼーっとしちゃダメよ」
「はい、すいません」
……本当に最悪だ。
靴下はまだ乾かないし、先生には怒られるし。
深いため息をつきながら、教科書に目を落とす。
今日はため息ついてばかりだ。
「はい、では次の文を読んでもらおうかな。……えーっと、雨宮くん」
先生が、透くんを指名した。
……………あれ?
そういえば、透くんって雨宮くんだ。
透くんも、名前に「雨」が入ってる!
『雨だれ』さんは、星川先輩?それとも透くん?
一体どっち?