ラブレター【完】
放課後はいつも通り部活。
合唱コンクールが終わったばかりだというのに、もう新しいスコアが配られた。
秋の芸術祭で演奏する曲だ。
去年スコアを渡されたのは夏休み辺りだったのに、今年はやけに気が早い。
「今年こそ関東大会行こうな!」
そうか、3年生は今年で最後なのか。
いつも飄々としている部長の星川先輩は、少し熱っぽく言った。
うちの中学は、毎年地区予選は突破できるけれど、県大会から先には進めていないのだ。
今年の曲目は「インヴィクタ序曲」だ。
去年演奏した「シーゲート序曲」もそうだけれど、どうして吹奏楽の曲は「○○序曲」が多いんだろう。
博識な透くんなら、もしかしたら知ってるかなあ。
さすがに吹奏楽はわからないかなあ。
あ、梅雨の由来、訊き忘れてしまった。
明日こそ訊いてみよう。
……それにしても。
星川先輩が『雨だれ』さんかも、と思った矢先に、透くんが『雨だれ』さんの条件をどんどん満たして行く。
どちらなのか、さっぱりわからない。
スコアが配られた後は個人練習だったので、わたしは第2音楽室に行くことにした。
久しぶりにあのピアノをのんびり弾きたかったし、もちろん『雨だれ』さんからの返事を見に行くためだ。