ラブレター【完】
「……透くん。1つだけ訊いていい?」
わたしはゆっくりと口を開いた。
ちゃんと確かめないといけない。
『雨だれ』さんかもしれない透くんじゃなくて、好きだと言ってくれた目の前の透くんに、きちんと向き合うために。
「うん?」
「透くんは、第二音楽室に入ったこと、ある?」
わたしが尋ねると、透くんは不思議そうに首を傾けた。
「第二音楽室?」
「音楽室の隣の隣」
「あー。ないけど……なんで?」
「……そっか。ないなら大丈夫」
透くんは『雨だれ』さんじゃなかった。
『雨だれ』さんじゃないけれど、わたしを好きになってくれた。
「あの……ありがとう」
わたしは透くんに言った。
好きになってくれて、嬉しかったから。
「いや、天寺のこと気づいてたし、本当は言うつもりなんてなかったんだけどね」
透くんは笑って答えた。
その笑顔に、胸がきりきりと痛んだ。
「でも、今にも泣きそうな鈴木見たらつい、ね」
「……」
そっか、わたしさっき、そんなに悲しそうな顔してたんだ……。
「まあ、これからもいい友達でいてよ」
透くんはやっぱり笑って言った。
「うん、もちろん。ありがとう、透くん」
わたしが言うと、透くんはそのまま、入り口に向かってゆっくり歩き出した。
そして入り口で一度振り返って、
「天寺のこと頑張りなよ。きっと大丈夫だから。じゃあね」
そう言って、笑って手を振ってくれた。
その優しさで、胸が苦しくなった。