ラブレター【完】

生まれて初めて、面と向かって告白された。

びっくりしたし、嬉しかった。

でも、気持ちには答えられなかった。

せっかく好きになってくれたのに。

すごく申し訳ない気持ちでいっぱいになった。

自分を好きになってくれた人を好きになれたら、そしたら全部うまくいくのに。

ともちゃんのことなんて好きにならないで、透くんを好きになっていれば。

そしたら誰も傷つかないで幸せになれるのに。


深いため息をつきながら、とぼとぼと音楽室に向かった。

でも、音楽室の前で、わたしは思わず足を止めた。

ああ、そうだった。

透くんじゃないということは、星川先輩が『雨だれ』さんなのだ。

……どうしよう、どんな顔して先輩に会えばいい?

わたしは『雨だれ』さんの気持ちに、先輩の気持ちに、どう答える?

わたしは『雨だれ』さんが好き。

黒板で文通をした、誰だかもわからない『雨だれ』さんが好き。

けれど、星川先輩のことを好きかと訊かれると、わたしはきっと頷けない。

同一人物だとしても。

だって……。

わたしが勝手に妄想して恋をした『雨だれ』さんは、星川先輩ではなかったんだもの。

わたしが思い浮かべる『雨だれ』さんの姿は、いつだって……ともちゃんだ。

こんなの、きっとただの願望。

そうあって欲しいから、そう妄想しただけだ。

わたしはどうしても、ともちゃんがいい。
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