ラブレター【完】

音楽室に入る踏ん切りがつかず、廊下に佇んでいたら、

「えー!!いつからですか?!」

突然、中から大きな声が上がった。

何事かと思って覗けば、部員達はみな練習もせずに、星川先輩をとり囲んでいた。

そういえばさっきから、楽器の音が全くしていない。

「先月の終わりくらいかな」

「えー!全然気づかなかったー!」

みんな何の話をしているんだろう。

音楽室の中に一歩入ると、後輩の女の子がパタパタとわたしの元に駆け寄って来た。

「理奈先輩、大ニュースですよ!」

「ん、なに?」

「なんと、部長に彼女がいることが発覚したんです!」

「…………は?彼女?」

わたしは、きっとものすごく間抜けな顔をしたに違いない。

後輩の話によると、星川先輩は副部長と付き合っていて、昨日2人で手を繋いで帰っている所を、部員に目撃されたんだそうだ。

「へえ、そうなんだ」

なんだか気が抜けて、わたしはどうでもよさそうな相づちをした。


……星川先輩も『雨だれ』さんじゃなかった。

星川先輩は素敵だけれど、『雨だれ』さんじゃなくてやっぱりほっとした。

あれ?じゃあ『雨だれ』さんって?

星川先輩でも透くんでもないのだとしたら、『雨だれ』さんは一体誰なんだろう。

急にふり出しに戻ってしまった。
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