ラブレター【完】
部のみんなが星川先輩の件で騒いでいる隙に、わたしは音楽室を抜け出した。
向かう先はもちろん、第二音楽室。
『雨だれ』さんからのメッセージを確認するためだ。
いつも通り、第二音楽室のドアは開け放たれていた。
ここはいつも開けっ放しになっているけれど、鍵を閉めたりはしないのだろうか。
入り口からそっと中を覗く。
黒板に目をやれば、見慣れた大きな文字が、黄色いチョークで書いてあった。
「うん、それでいいよ。
どう?俺の正体、わかりそう?」
それでいいよ、というのは、たぶん木曜日の放課後黒板に名前を書く、という件だ。
でも、書く名前をすっかり見失ってしまった。
ずっと星川先輩か透くんだと思っていたのに。
だって条件をある程度満たすのは、この2人しか思い付かない。
まさかこんな事態になるなんて。
『雨だれ』さんが書いた大きな文字を消して、わたしは黄色いチョークを握りしめると、でっかく力強く書いた。
「どうしよう、全然わかんない!!」