ラブレター【完】

内容は王道のミステリーのようだ。

孤島に閉じ込められて、連続殺人が起きて、探偵役が事件を推理するもの。

いわゆる「犯人はこの中にいます」系だ。

主人公の探偵はイケメンだし、ストーリーもハラハラするので、わたしはどんどんページをめくった。

今手にしているのが1巻だったから、解決編が2巻だったらどうしよう、と心配したけれど、途中でちゃんと解決編に移行した。

あーあ、わたしにもこんな推理力があったら、『雨だれ』さんの正体もすぐに突き止められたのに。

そんなどうでもいいことを思いながら、解決編を読み進めていく。

『3人を殺害した殺人鬼エンペラーは、あなたですね、本宮円(もとみやまどか)さん。いや……山本帝(やまもとみかど)さんとお呼びした方がよろしいでしょうか?』

トリックを粗方説明した探偵が、ついに犯人を名指しした。

もとみやまどか、やまもとみかど。

「………………え?」

突然、あることを思い付いたのだ。

もしかして…………。

わたしは慌てて、カバンの中からノートとシャーペンを取り出した。

そして、今思い付いたことを紙に書いてみる。

でも違う……待って、じゃあ、ひらがなじゃなくて。

……ああ、やっぱり。

だから「あさきゆめみし」がヒントって。

頭の中の霧が、急に晴れていくような、そんな感じだった。

そっか、そうだったのか。

情報が足りなくて、説明できないことはまだあるけれど。

でもきっと、これが答えだ。

「…………もうっ。ショパンの雨だれなんて、全然関係ないじゃん……」

悔しくて、でも嬉しくて、思わず独りごちた。

ラブレターの主『雨だれ』さんの正体が、やっとわかった。

わたしは読みかけのマンガをともちゃんの机の中に放り込むと、第二音楽室へと急いだ。


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