ラブレター【完】

「だろうね。……あ、あさっての日曜ひま?」

ともちゃんがわたしに尋ねた。

「えっ?ひまだけど……なに?デート?」

わたしが嬉しそうに訊くと、ともちゃんは「ああ、まーね」と照れ臭そうに鼻の下をこすった。

「日曜日、プール行かね?こないだ行こうって言った新栃木のやつ。泳ぎたいんだろ?」

「うん!行く!やったー!」

わたしは嬉しくて、ともちゃんの腕に飛び付いた。

「うわっ!おま、あぶね!チャリ倒れんだろ」

怒ったようにわたしを睨み付けるともちゃんの顔は、でもちょっぴり嬉しそうだ。

「ごめーん!だって嬉しくて!デートだし、プールだし!」

「……ちゃんとさ」

「ん?」

「ちゃんとデートとして誘いたかったんだよ、あさって。だから木曜の放課後までに、とりあえず俺に辿り着けと」

なるほど、だから急に「3日以内」って書いたのか。

「そっか、そしたら遅くても金曜には、日曜のデートに誘えるってことか」

「そそ」

「ふふ、ありがとう」

でも、もしわたしが『雨だれ』さんがともちゃんだってわかんなかったら、どうするつもりだったんだろう。

……いや、そもそも、どうしてわざわざ『雨だれ』さんと名乗り、黒板にラブレターなんて書いたんだろう。

直接告白してくれればよかったのに。

やっぱりこれが、いちばんの謎だ。

「……あ、そうだ。3つめの質問の答えは?」

「あー、なんでラブレター書いたのかってやつ?」

「うん。なんでなんで?」

ワクワクして目を輝かせたら、ともちゃんはそんなわたしを見て、ふっと鼻で笑った。



「ひみつ」



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