ラブレター【完】
4時間目の授業が終わって、窓の外を眺めてぼおっとしていたら、
「おい、理奈」
不意に前の席から鋭い声に呼ばれた。
「ん?なに、ともちゃん」
前の席の天寺智輝(あまでら ともき)が、こちらを振り向いて眉間にシワを寄せている。
ともちゃんこと智輝とは、小学校は違うけれど通っていたスイミングが一緒だったから、昔からの顔馴染み。
5年生の時にスイミングが潰れてしまって会わなくなって、また中学で再会した。
2年連続同じクラス、しかも今は席が前後だ。
「なにってお前、給食当番だろ?今日」
「あっ、忘れてた!」
そうだった、『雨だれ』さんのことで頭がいっぱいで、すっかり忘れてしまっていた。
「ほら、早く行くぞ」
「ともちゃんもなの?」
「おう」
慌てて三角巾とエプロンをつけて、すでに準備ができている他の当番達と一緒に給食室に向かう。
廊下を並んで歩きながら、ともちゃんの頭がわたしの頭より結構上にあることに気づいた。
去年はそんなに高くなかった気がしたのに。
「ねえ、ともちゃんって身長何センチ?」
「168」
まさかともちゃんが『雨だれ』さんなんてことはなさそうだけれど、念のため訊いてみることにした。
「あのね、ショパンの雨だれって知ってる?」
「なに?食パンと飴玉??」
「……もういい」
訊いたわたしがバカだった。
とりあえず、『雨だれ』さんはともちゃんじゃないことだけは確かだ。