ラブレター【完】
「えー何聞けばいいの?」
「じゃあ…………」
俺は理奈の耳元に顔を寄せた。
「今日の給食のさあ……」
「給食?…………あ、ともちゃん、まさかわたしの大好きなあれを……」
「その通り。デザートのプ」
プリン差し出せ。
そう言おうとしたら、理奈が「ねえ、あれ!」と大きな声を上げた。
「なんか様子へんじゃない?」
「ん?」
「もしかして溺れてない?!」
理奈の視線を追うと、プールの中央で不自然にもがく、クラスメイトの姿が。
「まじか」
あれは……相子(あいこ)か?
周りのやつも先生も、まだ誰も気づいていない。
「わたし助けてくる!」
「あぶねーからやめろって」
溺れてるやつを助けるのは、実はすごく危険だ。
泳ぎ出そうとした理奈の体を、俺は後ろから慌てて捕まえた。
そしたら図らずも、俺は理奈を後ろから抱きしめる形になった。
でもそんなの、昔は全然平気だったのに。
心臓が、
ドクンッッ!!
ってすごい勢いで跳び跳ねた。
なんだこれ。
「……俺が助けるから」
俺はそう言うと、理奈を解放して、溺れている相子の元へと急いで泳ぎ出した。
抱きしめた理奈の、細くてそのくせ柔らかい感触。
こいつって「女の子」なんだな、って思った。
初めてちゃんと意識した。