最上階ロマンス
「…え…っ」

その瞳に、一瞬、ドキ…っとした…

「お前、ソレ、本気で言ってんの?」

その…、冷ややかな声…と。。

少し、寂しそうな瞳を向けた琢磨…

「…っえ…?」
《なんで…、そんな瞳で見るの…?》



その後も、事務所の社員や顧客やら…と、挨拶を交わし…。。

適度に、アルコールも勧められた実咲…

「…あの…っ」

実咲は、琢磨の方を見上げる…。。先程から、履きなれないヒールで、足の踵が悲鳴を上げそうだった…

足の痛みから、琢磨のスーツの袖にしがみつく…

「どうした?」

実咲の珍しい行動に、何かあったのか?…と、察したようだ。。

「…足…、靴擦れみたい…。
こんな高いヒールのある靴、履きなれなくて…」

そぅ、その足の方を見ようと視線を落とした実咲…

が。。

実咲の腰を抱き寄せ…、会場の隅にあるソファに腰を下ろさせ…、琢磨は膝をつき、実咲のヒールを脱がす…

微かに…、足の踵のヒールが当たる部分に、出血してしまっていた…

「…うる…っ!」

「不味いな。痛かっただろ?」

つぃ…名前を呼ぶ…直前に…、その言葉を遮るかのように、実咲のことを見上げながら、言った琢磨…


その、心配そうに…自分を見上げる琢磨に、胸元の心音が高まった…

「…だ、大丈夫だから…」
《漆原くんが、あたしの足…

なんか…、優しい…》


「これじゃ、帰れないよな…」

「…え…っ? …だ、大丈夫じゃないかな?
帰る時も、タクシーで帰れば…っっ」

琢磨は、実咲に…不敵な笑みを浮かべながら…

「今日は、部屋を取ってあるんだ…。
俺も飲みすぎたしな…」

「…え…? 泊まるの?」
《えぇ~!!》

声にならない…声を上げそう…になった実咲…


「あぁ、まぁ…元々、そのつもりだったし。。
ちょっと、待ってて…挨拶してくる…」

そぅ、一瞬…笑顔を向けた琢磨に、いつにも増して…胸の高鳴りが抑えられない…

踵を返し、背を向ける琢磨…

「……っ」
《なにょ…、あたしのこと、覚えていないくせに…っ

なんで、そんなに優しいの…?


こんなこと…、どうしてだろう…?》

そぅ、言い聞かせるかのように…

「あれ? 松永さん…」

その、聞き覚えのある…声が、頭の上から聴こえた…。。その声に、実咲は顔を上げる…

「…あ…っ! 成宮くん、なんで…?」

悠は、実咲の隣のソファに腰を下ろし…

「ウチの事務所も漆原の法律事務所に依頼することあるから…」

「…‘ 事務所’?」

「あー、俺、一応…映像クリエイターで。。映画とか…の特殊映像とか…、イラストとか…色々やってるけど
著作権とか…、そういうのがあったら…」

と、少し…照れくさそうに笑った…


きっちりとしたスーツではなく…カジュアルスーツを着こなす悠に羨望の眼差しを向ける女性も多い…

何を身につけても…似合う人とは、彼のような人のことを言う…と、実咲も思えた。。

「昨日は、大丈夫だったの?
だいぶ、飲んでたようだけど…」

そう、実咲に視線を向けた悠…、実咲は慌てて…


「だ、大丈夫っ! 彼に迷惑掛けちゃった…」

と、苦笑いを浮かべるしかない…

「そう言えばさ!」

何かを思い出した悠…

「松永さん、目元…、前と違う…よね?
前は、眼鏡かけてて…分かりずらかったけど。。一重だったような気が…
それと…」

悠は、実咲の顎先を掴み、自分の方に向かせ…その綺麗な顔を近づけながら…

「顎のラインも…、違うかな?」

その、言葉に…一瞬にして、心臓が高鳴った…

彼は、こういうことを無意識でやってのけるのか?…動揺が隠せない。。

と、同時に…彼のその言葉に、目の前が暗くなった…

「…え…っと…」
《…鋭い…っ!

え? なんで…っ》

「あー、別に責めるつもりないから、気にしないで…。コンプレックスは、誰にでもあるし…
ただ、前のも…可愛かったのに…って…
俺、そういうの…分かるから。気にしないで。」

「…え…っ?」
《て、フォローになってない~!

でも、なんで…気づいた…?》

そぅ…、実咲は、コンプレックスだった…目元と顎のラインをプチ整形していた…






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