最上階ロマンス
琢磨は、実咲の言葉から、何かを思い出した…。。

「お前、さっきから…何見て…て。。」

実咲が、自分から視線を逸らし、左手ばかりを見ている…のに気がついた。。琢磨は、自分の左手の薬指に光るリングを見て…

「あー、これか?」

と、左手をヒラヒラとさせ…

「俺、結婚してないけど。。」

「…は…っ?」

実咲の方をじっと見つめたまま…

「俺、モテるんだよ…。女が放っておかないの! 」

「……」
《それは、知ってるよ。

昔っから、選り取りみどり!だったもん。》


「だから、これは、女避け…なのっ!」

その、琢磨の言葉に…、実咲は両目をパチクリとさせる…

「…【女よけ】?」

微かに、首を傾げながら…聞き返した…

その、実咲の反応に…琢磨は、吹き出しながら…

「そ! 俺、昔からモテるんだよ…で、この仕事だから…なおさら、寄ってくるから~」

と、にこやかな笑顔を浮かべる琢磨…

「って、ことは…」

実咲は、【そう言えば…、高校生時代…女の子が切れたことがなかった…。】と、言うのを思い出していた。

「……っ」
《でも、それって…

結婚してるフリをしている…ってこと?

…なら、モテないんじゃないの~?》

と、実咲は短絡的な脳をフル稼働させたが…、琢磨の結婚してるフリを何故しているのか?…理解出来なかった…

「でも、それって…弁護士としてどうなの?
嘘ついてるって、こと?」

思わず…、本音を呟いた実咲に…

「何が? 誰にも迷惑かけてないけど。
意外とさ…、『結婚しててもいい』って女もいるモンだよ?」

と、何ら…悪びれる様子もない…。。

実咲は、思わず…深いため息をついた…

「……」
《相変わらず…なのか、どうなのか…分からないけど。。

この人、おかしい…っ!

やっぱ…、世界が違うな…この人…っ!

私には、結婚してるフリ…をするのが、理解出来ないし。

それでもいいって言う女の人たちの気持ちも分からない…》

と、思った時…

「お前、住む家は? 実家とか…? アテになりそうな親兄弟・親戚は?」

そぅ、突然…、現実に引き戻すような琢磨の言葉…、その言葉に実咲は、微かに苦笑いを浮かべ…

「あー、ウチ、親…いなくて。
高校の時に、事故で…2人ともいないの…兄弟もいないし。親戚も…
アパート、解約まではいてもいいって言われたけど…電気も水道も止まっちゃってて」

その実咲の言葉に、先程のノートに書き足していた琢磨の手が止まる…。。次の瞬間、実咲の方に視線を向け…

「ごめん。知らなくて…」

珍しく…、動揺しているのではないか…と、伺える琢磨に、実咲は慌てて首を左右に振りながら…

「あ! 大丈夫っ! もぅ、随分前のことだし。ずっと、今まで1人だったから…」

「じゃ、実家もなく…頼りになる人も…」

「うん。いない…」
《ホント、天涯孤独って…私みたいな人のことを言うんだよね…っ?》

その、実咲の言葉に…琢磨は、急に真摯な眼差しになり…無言を貫いた…

「あ…の…。」

琢磨が、何故…急に無言…となってしまったのか…、意味不明な実咲…

琢磨は、開いていたノートを、急に閉じた…

「ウチ、来る?」

その、突然…の言葉に…

「…っえ…?」

「依頼人とは、個人的に接してはいけないんだけど…。お前、まだ相談者…の段階だし。
家無し、職なし、金もない女を放っておけないだろ?」

その言葉に、実咲は両目を見開き…。。開いた口が塞がらない…

「…え…、えっと…。。それは、どういうことかな?」
《なに?

なに、いきなり言い出してるんだ? この人…っ!


自分の家に来るか?…って、普通、言わないでしょ?

いゃ、普通…でゎない人なんだけど…》

「じゃ、お前…これから先、どうやって生活するの?
部屋、借りれる資金は? 仕事を探すにしても…住所不定…じゃ、雇ってくれないと思うぞ」

琢磨の言葉に、実咲は何も言い返せない…

「でも…。。」

「じゃ! 俺がお前のこと、雇うから…!
家事全般やってくれたら、給料だす!
それで、部屋借りる資金になるだろ?」
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