アタシに付きまとう彼が愛おしい
「だから、好きな子ができたから3年も付き合った子はもう終わりにした」
「そんなの信じられない。あの神谷くんが3年も続いたなんて…」
「お前より長続きすると思うけどな」
「私、神谷くんの好きな人知ってるかも♪」
何故か、葵が♪が付いてそうな顔で言ってくる。
「分かるも何も、見たら分かるんでしょ、普通に」
ん?健永くんも知ってるの?
2人も知ってて、知らないのはアタシだけ?
そんなのずるいよっ!
「俺の好きな子、教えてやろーか?」
「え、いいの?」
神谷くんは、確かに意地悪だけど好きな子にしたら優しくなるんだろうなぁ。
「お前次第」
アタシ次第って、どーゆうこと…?
「さっき、教えてやろうか?と言ってたくせに、勿体ぶるな!」
ああいう態度、本当に大丈夫かな!?
ああいう人が3年も続いたなんて尊敬するよ…
「教えてください、だろ。知りたいなら丁寧語で言えや」
はぁ…!?
もう知らない!
って、何でアタシがムキになってんの…
「もう結構です。告るなら態度を直してよね!じゃないと振られるよ!」
「余計な世話だ」
「どもっ!」
好きな人かぁ…
「君ら、明日の予報が晴れだぞ!」
あっはい…
健永くんっていつも空気読めないんだよね。
「ハウステンボス♪ハウステンボス♪」
凄く楽しみにしてた葵が、満足した顔で寝た。
「そんなに知りたいなら、明日教えてやるよ」
赤くなった顔を隠すように、腕を顔の上に置いた神谷くんを見て、アタシは何も言わずに睡眠をとった。
次の日。
健永くんの言う通りに奇跡の晴れだ。
「あちぃ〜。飲み物買ってこよぜ」
健永くんがそう言って、ハウステンボスに着いてすぐ飲み物を買いに行った。
どーしようかな。
コーラか、カフェオレ迷うなぁ。
あ、やっぱ夏といえば炭酸だし、コーラにしよっと♪
コーラを買ってから葵のとこに行く。
「ファンタほんとに好きだね〜。前からずっとそうだったもんね、葵は」
健永くんはいつものみかんジュースで、神谷くんは…
「な、何勝手に人のバッグに入れてるわけ!?」
いきなり後ろからアタシのバッグにミルクティーのペットボトルを入れてきた。
「俺、手ぶらだからお前が持っとけ」
心臓がドクドクと、嫌な速さで鼓動する。
身体の奥から響くそれは、大雨で増水川の流れのように恐ろしく感じた。
「祐華?大丈夫?」
隣にいた葵が、心配そうな顔を覗き込んできた。
「あははっ、大丈夫」
何とか返事をし、笑顔を作る。
「あのね、アタシ神谷くんの事をもっと知りたいなぁって思うのは可笑しいのかな?」
「もう少し素直になったら?」
神谷くんに色々と悪く言われてきたのに、さっきのは嫌じゃなかった。
むしろ、もっとアタシを使って欲しいなぁって思ってしまった。