アタシに付きまとう彼が愛おしい
杉野洸太ね…
今までアタシが出会ってきた男の子とは違う。
何か独特の雰囲気を感じる。
だけど結局、そこらの男の子と何も変わらないんだから。
自信溢れる一方、何故かモヤっとした気持ちも芽生える。
「祐華、お昼食べよ」
「…またアンタか。ウザい、ストーカー。警察呼ぶよ」
あれから1週間。
杉野くんはほぼ毎日、アタシのとこに現れ、一緒にお昼食べようと誘ってくる。
当初の予定では冷たく突き放して、嫌われようと
するはずだったが…
どうやらアタシの予定は大幅に計算違いだったらしい。
じゃあ、どうしろっていうの?
「いいじゃん。隣いい?」
杉野くんがアタシを探せないように、毎日食べる場所を変えているのに、それも敵わない。
諦めてくれたら、手っ取りが早いのに。
仕方なく、今日も杉野くんと食べることにした。
「アンタと食べたら、美味しく感じない」
杉野くんはそんなの全く気にもせず、図々しくアタシの隣に座る。
「あーほんとにウザい。なんなのアンタは」
「祐華が俺に惚れるまで、しつこく付きまとうから」
「逆効果よ。しつこくしたら、もっと嫌いになっちゃう」
毎回、杉野くんを突き放しても全く傷つかないアンタのメンタルに恐れ入る。
「いい加減しろよ」
そんなアタシを守ってくれる健永くんは、杉野くんに何を言ったって無駄だった。
「初めましてさん、俺らの邪魔しないでくんない?」
「健永くん!アイツなんかほっとけばいいよ」
健永くんはほんとに優しいよね…
杉野くんとは真逆の性格だ。
どうして、杉野くんはあんなに真剣なの?
ほんとに全く理解できない。
どんなに突き放しても諦めてくれる気配もないし、こんなことしたって無駄なのに…
アタシだってストレス溜まる。
だけど、もうどうでも良くなってきた。
杉野くんがアタシの寂しさを埋めてくれるなら、何でもいい。
「アタシ、アンタのこと好きじゃないよ?」
「知ってる」
「これ以上、アタシと居たらアンタを振り回してしまうよ?」
「ああ」
「それでもいいなら、遊び相手になって」
やっちゃった…
それだけは絶対に避けようと決めたのに。
何故か、アタシの寂しさを埋められるのは杉野くんしかないと思えてきた。
だからって、利用するような付き合い方をしなくても良かったのに…
そう言いながら、心の中ではきっと少しずつ杉野くんを信じてみてもいいかなと思う自分がいる。
それを認めたくなくて、杉野くんを本気で信じたらまた裏切られるんじゃないかなという怖さを感じてるせいで、アタシは遊びの関係を選んで、自分の気持ちに嘘つくしかなかった。
こうやっていつも誰かのせいにして逃げてばっかだった。いい加減にそれを直したい。
「ごめん、忘れて!」
「俺がお前の寂しさを埋めてあげられるなら力になる」
「じゃあ、アタシの心を乱れてみてよ」
ごめんなさい…
アタシ、最低だね。
気づいてたら、杉野くんの存在がゆっくりと少しずつアタシの中で大きくなっているのは明確だった。
だけど、それを認めたくない。
大切な人を作ったら、いつ裏切られるか分からないから怖いんだ。