アタシに付きまとう彼が愛おしい


「河野さん、何故カッター持っているの?」



あっ。それは…アタシ、バカじゃん。家に置けば良かったって後から後悔。



「ご、ごめんなさい!あの、アタシがやったの」


真剣な瞳で見つめてきた先生が、次のように問い出された。



「正直に答えなさい。 河野さんは誰かを庇ってるんでしょ?」


今、目の前にいる男は体育の先生。

陸上部の顧問で、怒るととても怖い、廊下で歩きスマホも許されない、そんな先生に何を言っても信じてくれなさそう。


そう。アタシは葵を庇ってる。葵が苦しんでる事を気づきもしない先生に正直に話すわけないじゃん!

家庭科室から逃げるかのように後にした。
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