恋愛境界線
「怒って…ますか?」
私はベッドに腰をかけたタイミングでそう訊ねる。
すると"本郷先生"は目を丸くする。
「俺がか?何でだ?」
「私が、言うことを聞かなかったから」
おそるおそるそう言うと、"本郷先生"は言う。
「君のことなんて可愛いものだよ」
可愛い…
私のことを可愛いと言ったわけじゃないのに、こんなに嬉しいなんて。
「…そんなに、冷たく聞こえるだろうか」
「え?」
「君はいま、俺の言葉が冷たく聞こえたから怒っているのか聞いたのだろう?
よく、患者や看護師に言われるんだ。
特に子供にはよく泣かれる。
そんなつもりはないのに」
表情があまりない"本郷先生"の表情が少し哀しそうに見える。
そのこと、気にしてるんだ。
「"怒ってる"かなんて聞いてごめんなさい。
そういうつもりで言ったんじゃなくて…
まだ回復していないのに、無理するなって
私のために厳しく言ってくれたんですよね」
「それは、担当医として責任があるからな」
「私は、本郷先生を"冷たい人"だなんて思いません」
「なぜそう言える?」