恋愛境界線
「先生の右手」

「え?」

「右手で隠してますけど、怪我してますよね」

"本郷先生"は私に見えないように右手で隠しているつもりのようだったけど、さっきちらっと見えてしまった。

右手の甲に斜めに1センチ程、傷を負って血が滲んでいるのを。

「さっき点滴スタンドが倒れてきたときに、できたんですよね」

「べつにこれは…」

「私を心配させないようにですよね」


「これは、うまく受け止められなかった俺のせいだから、君は関係ない」


「ほら、私のせいにしないじゃないですか。
やっぱり優しい」


"本郷先生"はたぶん不器用なんだ。
伝え方が下手なだけで、患者さんや看護師さんも誤解してる。

この人は優しい人だ。

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