恋愛境界線
「大人しくしているか」
いつものようにそう言って"本郷先生"はやって来る。
「なんか、毎日聞かれてたらだんだん反発したくなってきました」
「え!?」
「冗談ですよ」
冗談を真に受ける"本郷先生"が可愛すぎて、つい笑ってしまう。
「今日は忙しかったんですか?もう20時前ですし」
「…そう、だな。急患と新患も多くて、かなり外来を延長したな」
なんか言葉に引っ掛かりがあるなと感じながら、
「そうだったんですか」
と私は言う。
"本郷先生"はベッド脇の丸椅子に腰かける。
そこからは少しの間沈黙が流れる。
「せんせ…」
私が声をかけ先生のほうを見ると、目を閉じている。
もしかして、寝ちゃった?
こんな数秒で眠ってしまうほど、疲れていたんだね。
そうだ。
メガネ、危ないしはずしたほうがいいよね。
私はそっと手を伸ばしてメガネの縁を触る。
その瞬間、先生がゆっくり目をあけて私のほうをみる。
目が合う。
あ。
「あ…ごめんなさい。メガネ、危ないと思って……ーーー」