恋愛境界線
「先生!これはどこに置いたらいいですか?」
「それは左の棚の二段目かな」
「はーい♪」
しーちゃんは下の方の本棚に本を片づけながら、先生に媚びを売っている。
私は淡々と狭い本棚にかけてある梯子にのぼり、本を片付けていく。
もう2度と入りたくないと思ってた準備室に、数時間後にすでに入っているだなんて思わなかった。
私は朝の出来事を思いだし、首をぶんぶん振って記憶を振り払う。
出会って数時間だけれど、生徒に接する姿を見ていると本郷先生は男女どちらにも人気で、明るい人だとわかった。
明るい…か。
あのときの哀しい目、表情…
あれは何だったんだろう。
それか私の気のせいなのだろうか。
それとも…
「赤坂!」
「え?」
考え事をしていたからだろう。
私は梯子にかけた足を滑らし、バランスを崩す。
「赤坂危ない!」
「きゃっ!」