恋愛境界線


「先生!これはどこに置いたらいいですか?」

「それは左の棚の二段目かな」

「はーい♪」

しーちゃんは下の方の本棚に本を片づけながら、先生に媚びを売っている。
私は淡々と狭い本棚にかけてある梯子にのぼり、本を片付けていく。

もう2度と入りたくないと思ってた準備室に、数時間後にすでに入っているだなんて思わなかった。
私は朝の出来事を思いだし、首をぶんぶん振って記憶を振り払う。

出会って数時間だけれど、生徒に接する姿を見ていると本郷先生は男女どちらにも人気で、明るい人だとわかった。

明るい…か。

あのときの哀しい目、表情…
あれは何だったんだろう。
それか私の気のせいなのだろうか。
それとも…




「赤坂!」

「え?」

考え事をしていたからだろう。
私は梯子にかけた足を滑らし、バランスを崩す。

「赤坂危ない!」

「きゃっ!」
< 12 / 230 >

この作品をシェア

pagetop