恋愛境界線

「今日で私も退院だから、医者と患者じゃなくなりますね」

「あ…ああ、そうだな」

「私達…付き合い始めたのに、"先生"って呼ぶのもおかしいかなって」

「確かに、そうだな。
君は若いから、今後外で会うときに"先生"って呼ばれると、大衆に誤解を招きかねないな」


先生は考える仕草をして、納得したように話す。
私は"大衆"という言葉が少しツボにはまりつつ続ける。

「でしょう?だから、"隼人さん"って…呼んでもいいですか?」

「あ…ああ。君が好きなように呼んでくれ」

あ。
先生照れてる。
わかりやすいなあ。

「じゃあ"隼人さん"は?」

「俺か?」

「今後も私を"君"って呼ぶんですか?」

「そう、だな…それは、良くないよな」


そう言って先生は考え込み、結論が出たようで私の顔を見るけれどすぐに目を逸らす。
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